多くの家族が、まず「週末に集まって、自分たちで片付けよう」と決めます。
結論を先に書きます。床が見えない家は、ふつうの片付けと同じやり方では終わりません。最初の週末にやるべきなのは袋を運び出すことではなく、「家族でやる範囲を決める」「探す物のリストを作る」の2つです。
ふつうの片付けと、何が違うのか
物の多い実家の片付けは、「部屋ごとに分けて、残すか出すかを決める」で進みます。床が見えない家では、その前提が崩れています。
- 分ける場所が無い。山を作る床が空いていないので、出しながら分けるしかありません
- ごみと大事な物が同じ層に混ざっている。通帳や鍵が、チラシの束の間から出てくることがあります
- 生ごみや傷んだ食品が埋まっている。袋を動かした瞬間に、においと汁が出ます
- 虫が出る。下の層ほど多く、家族が手で掘ると作業が止まります
- 床や畳が傷んでいる。物をどけてはじめて、湿気で沈んだ床に気づきます
- 運び出す通路が無い。玄関までの動線を作るだけで、半日かかることがあります
もうひとつ大きな違いがあります。近所の人が、すでに気にしている場合があることです。においや虫、庭まであふれた物は、家族より先に隣家が気づいています。作業のトラックが来る日は、それが一気に表に出る日でもあります。
家族でやるか、業者に頼むかの分かれ目
「家族でやれるところまでやって、無理なら頼む」は、いちばん時間を失う決め方です。無理だと分かるのは、たいてい何週末か使ったあとだからです。最初に、次の6つで見てください。
| 見るところ | 家族で進められる側 | 業者に頼んだほうがいい側 |
|---|---|---|
| 床 | 通路と部屋の一部に床が見える | 玄関から奥まで、床がほとんど見えない |
| 生ごみ・傷んだ食品 | 台所まわりに少しある | 複数の部屋に袋のまま埋まっている |
| 虫・におい | 窓を開ければ作業できる | 家に入った時点で作業をためらう |
| 量 | ひと部屋分の山が、数か所 | 家じゅうの部屋が、腰の高さ以上まで埋まっている |
| 期限 | 明け渡しや売却の予定がまだ無い | 日付が決まっている、または近所から苦情が出ている |
| 通える回数 | 近くに住む家族が、毎週通える | 遠方で、行ける日が月に一度もない |
右の列に2つ以上当てはまるなら、最初から頼む前提で段取りを組んでください。家族の役目は、袋を運ぶことではなく、次の章の4つです。
業者が入る前に、家族がやる4つ
床の見えない家の作業は、速さが売りです。裏を返すと、頼まれていない物は、ごみと一緒に出ていきます。作業が始まってから「あれを探して」と言っても間に合いません。
- 探す物のリストを紙1枚に書く……通帳、印鑑、権利書、家の鍵と合鍵、年賀状や住所録、写真、親が大事にしていた物。「見つけたら作業を止めて渡してほしい物」として業者に渡します
- 残す物を、部屋ごとに決めて伝える……「仏壇は残す」「この棚の中は触らない」など。口で伝えるだけにせず、紙に書いて貼ると作業員全員に伝わります
- 作業前の家じゅうを写真に撮る……離れて暮らす家族への説明にも、見積もりの相談にも使えます。撮る人は1人に決めて、同じ順番で
- 両隣と向かいに、作業の日を先に伝える……トラックが止まる日、においが出る日、作業が何日続くか。苦情を受けてから謝るより、先に一言のほうがずっと話が早く済みます
ご近所に何をどう伝えるかは 実家に人が住まなくなるとき、ご近所と自治会にどう伝えるか|伝える相手の順番と、伝えておく3つのこと を参照してください。
見積もりで金額が動くところ
床の見えない家の費用は、間取りより「量」と「手間」で決まります。同じ3LDKでも、何倍も差が出ることがあります。金額の目安を先に知りたくなりますが、この状態の家は現地を見ないと誰にも出せません。見積もりのときは、次のどこで金額が動いているかを確かめてください。
| 金額が動くところ | 何で決まるか | 見積書で見る場所 |
|---|---|---|
| 運び出す量 | トラックの台数、または荷台の容量 | 「何台分」「何立米」の書き方と、超えたときの扱い |
| 分別の手間 | ごみと物がどれだけ混ざっているか | 分別作業が作業費に入っているか、別の行か |
| 生ごみ・傷んだ物 | 量と、袋から漏れているかどうか | 特殊な処理として別料金になっていないか |
| 運び出す経路 | 階段、エレベーターの有無、トラックを止められる距離 | 搬出の条件が書かれているか |
| 清掃・消臭・虫 | 物を出したあとの床や壁の状態 | 空にするまでか、掃除までか。範囲の書き方 |
| 日数と人数 | 家の広さと量 | 作業が延びたときに追加になるか |
いちばん揉めやすいのは「清掃・消臭・虫」の行です。「片付け」の見積もりは物を出すところまで、というのが一般的な書き方で、床の汚れやにおいは残ることがあります。売る・貸すなど家の次の使い道があるなら、空にしたあとの状態をどこまで求めるかを見積もりの前に決めて伝えてください。
売れる物が出てきたときに、片付けの費用と相殺できるかどうかは頼む先で分かれます。その違いは 実家の片付けで出たものを売るなら、誰に頼むのか|片付け業者・買取業者・リサイクルショップの違いと、頼む順番 を参照してください。
頼む先を選ぶときに聞くこと
床の見えない家は、ふつうの片付けより業者の差が出ます。現地見積もりのときに、次の5つを聞いてください。答え方で、慣れているかどうかが分かります。
- 同じような状態の家を、どれくらい扱っているか。写真を見せてもらえるか
- 探し物のリストを渡したら、どう扱うか。見つけた物をいつ、どうやって渡してくれるか
- 集めた物の処分先をどう説明するか。家庭から出た物を運ぶには決まった許可や自治体との取り決めが要り、その説明があいまいな相手は避けてください
- 清掃・消臭・虫の対応が、見積もりに入っているか。入っていないなら、どこまでが別料金か
- 作業が見積もりの量を超えたら、どう連絡してくるか。作業の途中で金額を上げる場合の決め方
見積もりは、少なくとも2社から取ってください。この状態の家は、1社だけだと金額が高いのか妥当なのかを比べる物差しがありません。業者に頼む日程をいつ決めるかは 実家の片付けを業者に頼む日程は、いつ決めるのか|混みやすい時期と、明け渡し日から逆算する順番 にまとめています。
進める順番
- 家族で一度、家じゅうを見て回る……手袋とマスクを着け、この日は物を動かさない
- 分かれ目の表で、家族でやるか頼むかを決める……「やれるところまで」にしない
- 親が亡くなったあとの家なら、家財をどう引き継ぐかを先に専門家に確かめる
- 写真を撮り、探す物のリストと残す物のリストを作る
- 2社以上に現地見積もりを頼み、金額が動く6か所を比べる
- 作業日を決め、両隣と向かいに先に伝える
- 作業の初日だけは家族が立ち会う……探し物が出やすいのは最初に掘る層です
- 空になったあと、次の使い道に合わせて清掃の範囲を決める
業者の作業が終わったあとにも、灯油やスプレー缶、塗料など自治体も業者も引き取らない物が残ることがあります。その出し方は 実家の片付けで最後まで残るのは、自治体が引き取らないものです|灯油・スプレー缶・消火器・塗料の出し方 を参照してください。
よくある失敗
- 家族だけで週末ごとに通った。三か月たって片付いたのは玄関と廊下だけで、その間に近所から苦情が来た
- 探し物を伝えないまま業者に頼んだ。家の鍵の束と通帳が、ごみ袋と一緒に出ていった
- 見積もりを1社だけで決めた。作業の途中で「量が多かった」と言われ、比べる物差しが無かった
- 「空にする」と「掃除する」の違いを確かめなかった。物は出たが、においが残って売り出せなかった
- 近所に何も言わずにトラックを入れた。作業の2日目に、隣家から作業時間の苦情が入った
- 親が住んでいる家を、本人の留守中に一気に空にした。それ以来、家に入れてもらえなくなった
よくある質問
近所に知られたくないのですが、目立たないように頼めますか。
社名の入っていない車で来る、早朝や夕方を避けるなど、配慮の相談に応じる業者はあります。ただしトラックと人の出入りを完全に隠すことはできません。隠すより、先に両隣へ一言伝えておくほうが、結果として話は小さく済みます。対応の可否は依頼先に確認してください。
家族が立ち会えなくても、作業してもらえますか。
鍵を預けて進める業者はあります。その場合ほど、探す物のリストと残す物のリストを紙で渡し、作業前と作業後の写真を送ってもらう約束を先にしてください。できれば初日だけは、誰か1人が立ち会うことをすすめます。
業者に頼む前に、少しでも自分たちで減らしておいたほうが安くなりますか。
量が減れば金額は下がりやすいのですが、床の見えない家では、家族が少し減らしても見積もりはあまり変わらないことがあります。それよりも、探し物を先に見つけておく、残す物をはっきりさせておくほうが、作業が早く進みます。自分たちで出す場合の考え方は 実家の片付けで出たごみは、自治体と業者のどちらに出すべきか|量と期限で決まります を参照してください。
作業は何日くらいかかりますか。
家の広さと物の量で大きく変わるため、現地を見た業者に聞くのが確実です。見積もりのときに「何人で何日」と「延びた場合の扱い」を必ず書いてもらってください。明け渡しなどの期限があるなら、その日付を先に伝えます。
片付けたあと、また同じ状態に戻らないか心配です。
親がその家に住み続けるなら、片付けは一度で終わる作業ではありません。空にしたあと、家族が通う頻度と、ごみ出しを誰が手伝うかを決めておかないと、同じ状態に戻ることがあります。暮らし方の見直しは、片付けと別の話として家族で話し合ってください。
物があふれた実家を、家族でどこまでやり、どこから頼むかを決めたい場合は ご相談の窓口 からお気軽にお問い合わせください。
ご状況をうかがって、進め方と費用の目安をお伝えします。
