そして多くの方が、いちばん気になっている場所から開けてしまいます。押し入れの奥、仏間の引き出し、アルバムの箱。ここから始めると、ほぼ確実に一日目で止まります。手が止まる原因は物の量ではなく、最初に開けた場所が「決められない物」で埋まっていることだからです。
順番には答えがあります。①判断が要らない場所から開ける ②広い床を先に作る ③決められない物は「決めない」という置き場所を作る。この記事では、実際に体が動く順番と、最初の3時間で何をするかを具体的にまとめます。
なぜ「どこから」で止まってしまうのか
片付けが進まない家には、共通した始まり方があります。いちばん重たい場所から開けているのです。
押し入れの奥、たんすの引き出し、写真の入った箱、親御さんが大事にしていた棚。気になっているからこそ、最初に確かめたくなります。ところがこれらは、1点ずつ手が止まる物ばかりが入っている場所です。
「思い出から始めない」が最大のコツ
思い出の品は、片付けの最後に回してよいものです。急いで決める必要がある物ではありませんし、疲れていない頭で見たほうが、よい判断ができます。
最初にやるべきなのは、その逆です。ほとんど迷わずに判断できる物を、大量に動かす。これで床が空き、作業する場所ができ、家全体の見通しが立ちます。
部屋を開ける順番——判断の軽い順に並べる
間取りは家ごとに違いますが、「判断の軽さ」で並べると、どの家でもだいたい同じ順番になります。
| 順番 | 場所 | なぜここか |
|---|---|---|
| 1 | 玄関・廊下・階段 | 置きっぱなしの物が中心で、迷う物がほとんど無い。ここが空くと、以降すべての運び出しが楽になる |
| 2 | 水まわり(浴室・洗面・トイレ) | 消耗品と古い日用品が大半。判断がほぼ要らないのに、目に見えて減る |
| 3 | 台所 | 量は多いが判断は軽い。ただし食器と鍋で必ず手が止まるので、時間は多めに見る |
| 4 | 物置・納戸・ベランダ | 「いつか使う」で置かれた物が中心。使われていない年数がはっきり分かるので判断しやすい |
| 5 | 居間・寝室 | 生活の中心だった場所。ここから急に判断が重くなる |
| 6 | 押し入れ・たんす・書類のある場所 | いちばん重い。最後でよい |
| 7 | 仏間・写真・思い出の品 | 急がない。家族がそろう日まで待ってよい |
- 玄関と廊下が空くと、運び出しの動線ができる。ここが埋まったままだと、奥の部屋の物を出せません
- 目に見えて減るので、続く。水まわりは半日でまったく違う景色になります
- 家の全体像がつかめる。1〜4を回るころには、残りにどれくらいかかるかが自分で読めるようになります
- 重い判断のときには、体が作業に慣れている。いきなり押し入れを開けた日と、まったく違う進み方をします
最初の3時間でやること
初日にすべてを終わらせようとしないでください。初日の目的は、「次に来たとき、すぐ作業を再開できる状態」を作ることです。
- 【最初の30分】家じゅうを一周して、写真を撮る。片付ける前に、各部屋を1〜2枚ずつ。あとで家族に説明するときにも、業者の方に相談するときにも、この写真が一番役に立ちます
- 【次の30分】箱と袋、養生テープ、油性ペンを用意して、置き場所を1か所決める。玄関に近い部屋が向いています。この「作業の基地」が無いと、道具を探す時間だけで一日が溶けます
- 【次の1時間】玄関・廊下・階段を空ける。迷ったら考えず、いったん基地に寄せるだけでかまいません。まず通り道を作ります
- 【次の1時間】水まわりを1か所だけ終わらせる。洗面所がおすすめです。「1部屋を完全に終わらせた」という状態を初日に作ると、続き方がまったく変わります
- 【最後に】次に来る日を決めて、紙に書いて基地に貼る。日付が決まっていない片付けは、たいてい次がありません
物を4つに分ける——3つではなく4つにする理由
「残す・迷う・手放す」の3つに分ける方法はよく知られています。ところが実際にやってみると、「迷う」の山だけが際限なく大きくなります。
そこで、「迷う」を2つに割ってください。
| 分け方 | 中身 | 次にやること |
|---|---|---|
| ① 残す | 持ち帰る物・使い続ける物 | その日のうちに車へ。家に戻さない |
| ② 家族に聞く | 自分では決められないが、聞けば決まる物 | 写真を撮って、その場で家族へ送る |
| ③ 時間を置く | 聞いても決まらない物。思い出の品の多く | 箱に入れて日付を書き、次回まで開けない |
| ④ 手放す | 迷いのない物 | その日のうちに家から出す |
- ②は、その場でスマホから送ってしまう。「あとでまとめて聞く」は、ほぼ実行されません
- ③の箱には必ず日付を書く。「いつ入れた箱か」が分かるだけで、次に開けたときの判断が軽くなります
- ③の箱を増やしすぎない。目安は1部屋につき1箱。それ以上になったら、分け方ではなく判断のほうが止まっています
- ④は、その日のうちに家の外に出す。家の中に置いておくと、翌日には②や③に戻ります
必ず止まる3つの場所と、その抜け方
1. 台所——食器と鍋
台所は、量が多いわりに判断が軽い場所です。ただし食器と鍋だけは別で、ここでほぼ全員が止まります。使えるうえに、家族の記憶がついているからです。
抜け方は決まっています。「よく使われていた物を数点だけ選んで、先に②か①へ移す」。全部を見比べてから決めようとすると、いつまでも終わりません。先に残す物を決めてしまえば、残りは一気に動きます。
2. 書類・郵便物の山
棚や引き出しから出てくる紙の束は、その場で中身を読み始めると必ず一日が終わります。
やり方は「読まずに1か所へ集める」です。中身の確認は、片付けとは別の作業として、日を分けてください。なお実家に届き続ける郵便物そのものの手当ては、片付けより先に済ませておくと後が楽になります(空き家になった実家の郵便物をどうするか)。
3. 押し入れの奥・天袋
最後に残るのがここです。ここだけは、一人で開けないほうがうまくいきます。重い物が入っていることが多く、脚立の上での作業になるためです。
日を決めて、2人以上で、午前中に取りかかってください。疲れた夕方に高い場所の作業をするのは、片付け以前の問題として避けたいところです。
家族が一緒のときの進め方
人数が増えれば早く終わる、とは限りません。同じ物を全員で見て、全員で迷うという時間の使い方になりがちだからです。
- 部屋を分ける。同じ部屋に全員で入らない。1人1部屋が基本です
- 「聞く役」を1人決める。②の判断が要る物は、その人にまとめて集める。全員が全員に確認し始めると止まります
- 手放す判断は、その物をよく知っている人に任せる。知らない人が迷っても、答えは出ません
- 親御さんが同席されるときは、時間を短く区切る。ご本人にとっては、暮らしそのものを見直す時間になります。半日で切り上げる前提で組んでください
- その日の終わりに、10分だけ集まって「次にやること」を1つだけ決める。長い相談はしないほうが続きます
よくある質問
まとまった時間が取れません。半日ずつでも進みますか?
進みます。むしろ半日ずつのほうが向いています。丸一日やると後半は判断が雑になり、あとで悔やむ決め方をしがちです。半日で切るときは、「今日はこの1部屋」と場所を決めて、その部屋を最後まで終わらせてください。複数の部屋を少しずつ触ると、どこも中途半端なまま次回を迎えます。
親がまだ住んでいます。今から始めてよいものでしょうか。
ご本人が了解されているなら、始められます。ただし順番は変わります。住んでいる家では、使っていない場所(物置・納戸・天袋・使っていない部屋)だけに限ってください。生活している場所に手を入れると、片付けではなく生活の変更になります。「使っていない場所から」であれば、たいてい抵抗なく進みます。
遠方で、月に一度しか行けません。何から手をつけるべきですか。
行ける回数が限られるほど、順番の効き目が大きくなります。1回目は、この記事の「最初の3時間」をそのまま実行して、家の全体を写真に撮り、作業の基地を作るところまでで終えてかまいません。2回目以降は「今日はこの部屋」と決めて行くと、往復のたびに確実に前へ進みます。行き当たりばったりで始めると、毎回同じ場所を触ることになりがちです。
量が多すぎて、自分たちだけでは無理だと感じています。
その判断は早いほうが得です。ただし相談する前に、玄関・廊下だけは自分たちで空けておいてください。通り道があるかどうかで、作業の段取りは大きく変わります。加えて、各部屋の写真があると、相談の話がとても早く進みます。「全部お任せ」か「重い物だけ」かで進め方も変わるので、どこまでを自分たちでやるかを先に決めておくと、話がまとまりやすくなります。
途中で止まってしまいました。どこから再開すればいいですか。
止まった場所からは再開しないでください。そこは「重い場所」なので、もう一度止まります。いったん玄関と廊下に戻って、通り道をもう一度空けるところから始めてください。手が動く場所から入り直すのが、いちばん早い戻り方です。加えて、③の箱を1つだけ開けて、中身を4分割し直すと、止まっていた理由がだいたい見えてきます。
順番さえ決まれば、実家の片付けは動き出します。間取りや量を見て「どこから始めるか」を一緒に整理したい方は、いまの状況をお聞かせください。
ご状況をうかがって、進め方と費用の目安をお伝えします。
