迷う理由はひとつで、水道だけが「止めると困ることがある」設備だからです。電気やガスと違い、水道は使わなくても家を守る役割を持っています。
判断は好みではなく、「今後その家に人が入るかどうか」の一点で機械的に決まります。この記事では、止める前に確かめる3つ、残すと決めたときに必ず起きること、そして手続きの進め方を、実際に決める順番どおりにまとめます。
判断の分かれ目は「人が入るか」だけ
水道を止めるか残すかで悩む方は多いのですが、判断材料は実はひとつしかありません。これから半年ほどの間に、その家に人が入る予定があるかどうかです。
「もったいないから止める」「不安だから残す」といった気持ちで決めると、あとでもう一度手続きをやり直すことになります。開け閉めのたびに連絡と立ち会いが要るので、迷って何度も切り替えるのが、手間としてはいちばん大きくなります。
「人が入る」に含まれるもの
ここでいう「人が入る」は、住むことだけではありません。実家じまいでは、次のような場面でほぼ必ず水を使います。
- 片付け作業——手を洗う、雑巾を洗う、汚れた物をゆすぐ。水が出ない家での片付けは、想像よりはるかに進みません
- 庭の手入れ——草木への水やり、道具や靴の泥落とし
- 家を見てもらうとき——買い手・借り手・業者の方が来る場面。蛇口をひねって水が出ないと、設備が生きているかどうかを確かめられません
- ご近所への配慮——外まわりの掃除や、落ち葉を流すといった作業
逆に、当面は誰も行かない、行っても年に数回、という家であれば止めて構いません。その場合は後述する「止めたあとにやること」だけ押さえておけば大丈夫です。
止める前に確かめる3つ
止めると決めたときに、連絡する前に確認しておきたいことが3つあります。順番に見ていきます。
① 家の中に、水を使う予定の物が残っていないか
止めてから気づくと、もう一度開ける手続きが必要になります。いちばん多いのは「洗濯機と食器を残したまま止めてしまった」という形です。運び出す前に洗っておきたい物があるなら、片付けを終えてから止めるほうが順番として自然です。
② 給湯器・洗濯機・トイレの中に残っている水を抜いたか
元栓を閉めても、機器の内部には水が残ります。そのまま長期間置くと、傷みや汚れの原因になります。特に寒くなる地域では、残った水が凍って機器を傷めることがあります 要確認。取扱説明書に「水抜き」の手順が載っていることが多いので、機器ごとの方法をご確認ください。
③ 止めたあとも基本の料金がかかるかどうか
ここはお住まいの地域によって扱いが大きく異なります。「中止(閉栓)すればかからない地域」もあれば、「使用がゼロでも一定額がかかる地域」もあります 要確認。止める判断の前に、管轄の水道局へ一度確認しておくと、迷いがなくなります。
残すなら必ず起きること①——封水切れ
水道を残す判断をした場合、放っておくと必ず起きることが2つあります。まず1つ目が「封水切れ」です。
台所・洗面・浴室・トイレの排水口には、常に少量の水がたまる構造になっています。この水がふたの役割をして、下水側の空気と、虫の侵入を止めています。これを封水と呼びます。
対処は「通水」の一手だけ
やることは簡単で、行ったときに、家じゅうの蛇口を順番に少しずつ流すだけです。トイレも忘れずに流します。これで封水が戻り、においは収まります。
行く回数が少ない家では、排水口にラップをかけて蒸発を遅らせる方法もよく使われます。市販の蒸発防止剤を使う手もあります。いずれにしても、行くたびに全部の蛇口を流す習慣にしておくのがいちばん確実です。
においの対処は、ご近所や自治会への伝え方とも関わってきます。空き家のにおいや虫は、まわりの家にも影響が出ることがあるためです。
残すなら必ず起きること②——凍結
2つ目は凍結です。これは地域によって、備えの重さがまったく変わります。
寒くなる地域の家には、たいてい「水抜き栓」と呼ばれるものが付いています。冬の前に水を抜いておけば、管の中に水が無いので凍りません。場所や操作の方法は家ごとに違うので、実家に付いているかどうか、どこにあるかを、寒くなる前に一度確かめておいてください 要確認。
無人の家でいちばん怖いのは漏水
凍結にかぎらず、無人の家では「水が漏れていても誰も気づかない」という状態が続きます。水道を残すと決めたなら、行くたびに30秒でできる確認を習慣にしておくと安心です。
水道メーターで確かめる
やり方はどの家でも同じです。
- 家じゅうの蛇口を、すべて閉める(トイレや洗濯機も含めて、水を使っていない状態にする)
- 敷地内の水道メーターのふたを開ける
- メーターの中にある小さな円盤(パイロット)が回っていないかを見る
水を1滴も使っていないのに、この円盤が回っていれば、どこかで水が漏れています。その場合は自分で直そうとせず、管轄の水道局か、地域の指定を受けた工事店へご相談ください。
あわせて、行ったときの様子を写真に残しておくと、変化に気づきやすくなります。鍵の管理と合鍵の扱いを決めておくと、家族の誰が行っても同じ確認ができるようになります。
手続きの進め方
止める場合も残す場合も、連絡先は「その家の住所を管轄する水道局」です。市区町村の水道局・企業局・上下水道部など、地域によって名前が違います。
手元に用意しておくもの
| 用意するもの | どこにあるか |
|---|---|
| お客様番号 | 検針票(ポストに入る細長い紙)や、支払いの控えに書かれています |
| その家の住所 | —— |
| 使用者のお名前 | これまで支払っていた方のお名前 |
| 連絡のつく電話番号と、今後の送付先 | ここが重要です(下記) |
連絡のときに、送付先をご自身の住所へ変えられるかどうかを必ず聞いてください。郵便物全体の扱いは 空き家の郵便物と転送の手続き にまとめています。
止めたあとに、もう一度使いたくなったら
再び使いたくなった場合は、同じ水道局へ連絡すれば開けてもらえます。ただし申し込みから実際に使えるまでに数日かかることがあり、立ち会いが必要な場合もあります 要確認。片付けや家の引き渡しの予定が決まっているなら、逆算して早めに連絡しておくと安心です。
状況別の早見表
| いまの状況 | どうするか | あわせてやること |
|---|---|---|
| これから片付けを始める | 残す | 行くたびに全部の蛇口を流す。どこから片付けるかの順番を先に決める |
| 家を見てもらう予定がある | 残す | 前日までに通水して、においを消しておく |
| 片付けが終わり、当面は誰も行かない | 止める | 機器の水抜き。送付先の変更 |
| 年に数回、様子を見に行くだけ | 止める | 行く前に開けるのは現実的ではないため、持参した水で封水を足す方法もあります |
| 寒くなる地域で、冬の間は行けない | 止めて水抜き | 水抜き栓の場所を、寒くなる前に確認しておく |
| どうするか決まっていない | いったん残す | 止めるのはいつでもできます。先に止めて困るほうが多いためです |
電気とガスは止めました。水道だけ残すのは変でしょうか。
まったく変ではなく、実家じまいではむしろ普通の形です。電気とガスは「使うときだけ必要な設備」ですが、水道は使わなくても家を守る働きがあります。においを抑える、庭を保つ、来ていただいた方に設備を見てもらう——どれも水が出ないとできません。片付けが完全に終わるまでは、水道だけ残しておくという選び方で問題ありません。
久しぶりに実家へ行ったら、下水のようなにおいがしました。傷んでいるのでしょうか。
家が傷んだのではなく、封水が蒸発した可能性が高いです。台所・洗面・浴室・トイレの水を、すべて順番に少しずつ流してみてください。たいていはこれで収まります。流しても収まらない、床下から強くにおう、といった場合は別の原因が考えられますので、その際は工事店へご相談ください 要確認。
止めたあと、使っていないのに請求が届きました。間違いでしょうか。
間違いとは限りません。止めたあとの扱いは地域によって異なり、使用がゼロでも一定額がかかる地域があります。また、止めた月の途中までの分が最後に届くこともあります。お客様番号を手元に用意して、管轄の水道局へお問い合わせください 要確認。届いた紙をそのまま置いておくより、一度聞いてしまうほうが早く片付きます。
実家が遠方で、月に一度しか行けません。水道は残すべきですか。
片付けが続いている間は、残しておくほうが進みます。月に一度でも、行ったときに水が使えるかどうかで作業量が変わります。行くたびに、①全部の蛇口を流す ②メーターの円盤を見る、の2つだけ習慣にしてください。この2つで、においと漏れの両方に手が届きます。片付けが終わったら止める、という順番で構いません。
庭の水やりのためだけに残すのは、もったいない気がします。
庭がある家では、残す理由として十分に成り立ちます。草木が枯れたり伸びきったりすると、外から見て「空き家である」ことがはっきり分かる状態になります。まわりの家からの見え方にも関わりますし、家を見てもらう場面でも印象が変わります。もったいないかどうかは、止めたあとにかかる分と見比べて判断されると、答えが出やすくなります。
誰の名義で契約するのが正しいのでしょうか。
実際にその家を管理していく方のお名前にしておくと、その後のやりとりが早くなります。連絡・支払い・立ち会いがすべて同じ方に集まるためです。ご家族で分担される場合は、「水道は誰が見るか」を先に決めてしまうと、行き違いが起きにくくなります。名義の変更ができるかどうか、必要な書類は何かは、管轄の水道局へご確認ください 要確認。
水道をどうするかは、実家じまい全体の進み方とつながっています。片付け・家の引き渡しまで含めて、どの順番で進めるかを一緒に整理したい方は、いまの状況をお聞かせください。
ご状況をうかがって、進め方と費用の目安をお伝えします。
