けれど実際に進めてみると、詰まるのは頼み方ではありません。頼んだのに終わらない部分です。
片付け業者は、運ぶ・分ける・捨てる・売るを引き受けてくれます。しかし「何を残すか」を決めることはできません。そして、契約者本人でないとできない手続きもあります。
この記事では、頼める作業と頼めない作業を線引きしたうえで、頼めない側をどう進めるかを整理します。
まず、線を引く
片付け業者に頼めることと、頼めないことは、はっきり分かれています。
| 頼める | 頼めない(家族の作業) | |
|---|---|---|
| もの | 運び出す、分ける、捨てる、値が付くものを買い取る | 何を残すかを決める |
| 家 | 清掃、草刈り、定期的な見回り | 家をどうするかを決める |
| 手続き | 作業に伴う届け出(業者側の範囲) | 契約者本人の手続き |
| 人 | ― | 本人の同意、家族の合意、近隣への連絡 |
そして厄介なことに、右側は「作業」に見えないため、予定に入れ忘れます。「土日で片付ける」と決めたスケジュールに、話し合いの時間が入っていない。これがいちばん多い詰まり方です。
①何を残すかの判断
業者は「これは要りますか」と聞いてはくれますが、答えを出すことはできません。
そして、判断が必要なものは点数が多いのが実際です。写真、手紙、子どもの作品、賞状、記念品、食器、着物。1点ずつ止まると、作業が進みません。
- 作業日より前に、判断を済ませておく。業者が来ている時間に迷うと、そのぶん費用が伸びます
- 「保留」の箱を1箱だけ作る。上限を決めないと、全部が保留になります
- 写真とアルバムは、当日決めなくてよいと最初から決めておく。ここで止まるのが分かっているなら、予定に組み込む
判断が進まないときの考え方は 実家が片付けられないとき、値が付くかどうかの見分けは 実家じまいで出た不用品の買取 にまとめています。
②本人の同意
親御さんが存命で、家がまだ使われている場合、これが最初の関門です。
ここを飛ばして業者を手配すると、当日に「聞いていない」となって作業が止まります。そして一度こじれると、次の帰省でも話が進みません。
片付けを嫌がられたときの進め方は 実家の片付けはどこから手をつけるか を参考にしてください。
親御さんが施設へ移るタイミングで進める場合の段取りは 親が施設に入るとき、実家をどうするか にまとめました。
③契約者本人でないとできない手続き
ここは業者の問題ではなく、制度の問題です。誰が契約者かで、できる人が決まります。
| 手続き | 誰がするか | 備考 |
|---|---|---|
| 電気・ガス・水道の停止 | 契約者本人、または委任を受けた家族 | 止める順番に注意 |
| 固定電話・インターネットの解約 | 契約者本人 | 本人確認が必要なことが多い |
| 新聞・定期購読の停止 | 契約者本人 | 止め忘れが最も多い項目 |
| 郵便物の転送 | 本人または同居の家族 | 届出が要ります |
郵便物の扱いは 空き家に届く郵便物をどうするか を参考にしてください。止めずに放置すると、郵便受けがあふれて空き家だと分かります。
④家族のあいだの合意
兄弟姉妹がいる場合、ここが最も時間のかかる部分です。そして業者はまったく関与できません。
- 「誰が動くか」を決める。近くに住んでいる人が全部やる形になりがちで、あとから不満が出ます
- 「何を残すか」を、作業前に共有する。捨てたあとで「あれはどこ」となると、修復できません
- 費用をどう分けるかを、見積もりを取る前に話しておく
- 写真を撮って共有する。離れて住んでいる家族には、これがいちばん伝わります
夫婦のどちらかの実家である場合、関わり方が難しくなることがあります(夫の実家の片付けにどこまで関わるか)。
⑤近隣・自治会への連絡
これも業者はしません。そして、しておかないと後で効いてきます。
- 作業日の前に、両隣と向かいへ一声かける。トラックが停まり、大きな音が出ます
- 自治会に入っている場合、退会や班の扱いを伝える
- 空き家として残す場合、連絡先を伝えておく。台風や雪のあと、最初に気づくのは近所の方です
何をどう伝えるかは 実家じまいを近所と自治会にどう伝えるか にまとめました。家を残す場合の管理は 空き家管理代行はどこまでやってくれるか、庭の手入れは 空き家の庭と草刈り を参考にしてください。
頼めない側を、先に片付ける
実家じまいの段取りは、この順にすると詰まりません。
- 本人の同意(②)と、家族の合意(④)を取る。ここが済むまで業者に連絡しない
- 鍵が何本あって誰が持っているかを整理する(実家の鍵は誰が持っている?)
- 押入れ・天袋を開けて、量を把握する
- 何を残すかを決める(①)。作業日より前に
- 業者の見積もりを取り、日程を押さえる(片付け業者の日程はいつ押さえるか)
- 近隣に伝える(⑤)
- 作業当日
- 手続きを止める(③)。水道と電気は最後
逆に言えば、1〜4さえ済んでいれば、あとは頼めます。
よくある質問
丸ごと全部お任せ、はできませんか
ものを運び出して家を空にする、という意味では可能です。ただし「何を残すか」を誰も決めていない状態で頼むと、残すべきものまで出ます。最低限、持ち帰るものだけは先に抜いておいてください。
遠方で、何度も帰れません。優先順位は
1回目の帰省で②④(同意と合意)と、押入れ・天袋を開けることまで。この2つが済んでいれば、以降は写真と電話で進められます。逆に、ここが済まないまま作業だけ進めると、必ず戻ります。
親が亡くなったあとで、同意を取る相手がいません
その場合、②は不要になり、④(家族のあいだの合意)が重くなります。関係する家族全員に、作業日と処分するものを事前に共有してから進めてください。あとから「あれはどこ」となる事態を避けるのが目的です。相続人が複数いるとき、遺品は相続人全員の共有になります(民法第898条)。相続放棄を考えている人がいる場合は、処分の前に止まってください。相続財産を処分すると単純承認をしたものとみなされ、放棄ができなくなることがあります(民法第921条第1号)。
業者に「これは捨てていいですか」と聞かれて困ります
その場で答えられない状態が、そもそも準備不足のサインです。当日に判断が発生すると、作業が止まり、費用も伸びます。作業日の前に、保留の箱を作って分けておいてください。
手続きは、どこから手をつければいいですか
止め忘れが起きやすいのは、新聞・定期購読・インターネットです。金額は小さくても、止まらないまま引き落とされ続けます。水道と電気は最後、それ以外は早めに、と覚えておくと外しません。
まとめ
- 業者に頼めないのは5つ ── 何を残すかの判断/本人の同意/契約者本人の手続き/家族の合意/近隣への連絡
- この5つはお金で解決できないため、実家じまいの実際の律速になります
- 「作業」に見えないので、予定に入れ忘れやすい
- 同意と合意が済むまで、業者に連絡しない。前提が固まっていない見積もりは意味がありません
- 水道と電気は最後に止める。作業ができなくなります
- 家族には「この日にこれを処分します」と期限つきで伝える
実家じまい全体の進め方や費用の考え方について迷っている場合は、ご相談の窓口からお気軽にお問い合わせください。
ご状況をうかがって、進め方と費用の目安をお伝えします。
